DFR通信

2012′ 06.07.
ドッグファイトレーシングの中古車制作


HONDA NSR250R (MC21)

車体編

エンジン編

完成


1990~1993年の間に制作された、ガルアームが特徴的な2stレプリカの王道マシン。
製造から20年立った今尚、根強い人気を誇り、後継であるMC28(プロアーム)を凌ぐパフォーマンスを発揮するため、サーキットユーザーも少なくない。
今回はこのNSR250Rがベース車両です。


今回はこの車両を使用して、当社ドッグファイトレーシングが定評を頂いております2ストローク車両に、如何に情熱を持って接しているか。なぜここまで徹底的に整備させて頂いているのか・・・。
中古車とはいえ、全て完調とし、すでに新車では手に入らない希少車を、より新車に近い状態でご提供させて頂いている販売中古車の制作の全貌をご覧下さい。





車体編



フロントブレーキキャリパーの点検・整備です。ピストン、シール類を全て取り外します。シール類は全て交換、ピストンは再使用できるようであれば洗浄していきます。
オートバイのピストンは剥き出しの物がほとんどの為、錆などの腐食のひどい物はピストンごと交換致します。



キャリパー本体も入念に洗浄していきます。
ブレーキフルードが通る穴やオイルシールやダストシールのところには汚れが固着している事が多いので、しっかりと時間をかけて行います。




フロントブレーキマスターも全てバラしてチェックしていきます。
タンクやホースも割れ等が無いかチェックし、マスター本体も洗浄していきます。




リアブレーキキャリパーの分解洗浄を行います。
フロント同様、シール類は全て交換を行い、ピストンは再使用可能であれば洗浄後組み上げます。
キャリパー本体も同様全て細かいところまで洗浄致します。


リアブレーキマスターシリンダーもバラしてプッシュロッドの曲りが無いかどうか等チェックします。
こちらもしっかりと洗浄後、組み上げます。




フロントフォークのオーバーホールを行います。
オイルシール、ダストシールは新品交換致します。ダンパーロッドやアウターチューブ、その他細かいパーツまで全てチェック後、洗浄し組み上げます。

オイルはもちろん新品に交換致します。






こちらのインナーチューブは点錆がひどく、オイル漏れを引き起こす可能性があったため、再メッキ処理を行い、新品に近い状態にしていきます。


再メッキ処理したインナーチューブです。





ドッグファイトレーシングではFフォーク単体の加工も承っております。
詳しくはこちら




リアサスペンションは全てバラしてオーバーホールしていきます。
こちらの車両も写真の通り、オイルが漏れてしまっていました。
ダンパーロッドの錆も確認します。


ダンパー自体も弱くなってしまっていたのでドッグファイトレーシングでは必ずオーバーホール致します。





リアのリンクをチェックしていきます。
クラックや歪んでいたりするものもあるのでこちらも入念にチェックしていきます。こちらも洗浄後、グリスアップして組み上げていきます。




スイングアームのチェックも致します。
ピボット部やアクスル部等、クラックが無いか割れが無いか入念に行います。
とりわけ、スイングアームは汚れやすいパーツでもあるので、点検後、しっかりと洗浄していきます。


ご覧のようにピカピカに仕上げます。




ステムシャフトの曲りが無いか、ステムベアリングのチェックをしていきます。



ステムベアリングをチェックしたらレースの内側も洗浄していきます。
割と汚れが溜まりやすいところであり通常メンテナンスでは中々手の届かないところなのでこの機会に細かい部分は全て実施します。






エンジン・スイングアームを外さなければ、普段届かないところまで入念に洗浄致します。



洗浄しながら、フレームのチェックを行い全て手作業で細かいところまで手を抜かないのがドッグファイトレーシング流です。








要チェックなパーツがこちらのエンジンマウント。調度スプロケットとチェーンの裏側に付いてるものですが、摩耗が進むと走行中にエンジン自体が動いてしまう可能性がありますので必ず確認致します。




フレームのチェックを行います。特にエンジンハンガー部分はクラックが無いか入念にチェックしていきます。










ホイールのベアリングのチェックもします。ゴロゴロしていたり、交換が必要な物は全て新品に交換致します。
またブレーキディスクの摩耗もチェックしていきます。









チェーンのチェックもしますが、ほとんどの中古車両のベースはチェーンが伸びきっているか錆が多く固まったものがほとんどです。



基本的にドッグファイトレーシングでは新品、もしくは程度の良い中古の物に交換致します。





ワイヤーケーブルは全てチェックし、注油して完了させます。





バッテリーは電圧チェック後、使用可能の状態であればフル充電を行いますが、再使用が出来ない場合はもちろん新品に交換致します。





エンジン編



エンジンを降ろす前に外せる部品は外していきます。
まずタンクを外し、上部にあるエアクリーナーボックスを外していきます。中にはエアフィルターが入っており、ゴミ等の目詰まりがないか、破れ等がないかチェックしていきます。万が一穴等が開いていると空気の流入量が増え、薄い状態が続いてしまい最悪エンジンを壊す可能性もあります。
20年以上経過しているので中にはエアフィルターのスポンジがボロボロになって、それが崩れて目詰まりを起こしている車両もしばしばあります。



エンジンはチャンバーを外した状態から、シリンダーヘッドを外していきます。この時、排気側からピストンサイドやシリンダーの具合を軽く見る事が出来ますが、既に焼き付きのひどい車両や排気漏れのひどい車両もよくあります。



シリンダーヘッドを外すとピストンが見えてきます。写真でおわかりの通り、ピストンにかなりカーボンが堆積しています。カーボンの堆積は異常燃焼(デトネーション)を引き起こすばかりでなく、圧縮の変化によりシリンダーを痛めてしまう場合がありますので、ここまで使用されたピストンは交換となります。



シリンダーを外すとコンロッドに繋がったピストンが出てきます。
先ほどのカーボンの堆積もですが、シリンダーとの摩擦による縦傷がかなり激しいです。


ピストンリングも痩せてしまっていて、ピストンリング下も排気ガスが吹き抜けて黒いカーボンが付着しています。
これでは圧縮が抜けてしまうために、もちろん全て交換です。





上バンクのシリンダーも外していきます。
やはり、どちらのピストンも走行距離なりの消耗が見られました。2ストロークに関しては、4ストロークよりもピストンの消耗は激しいので、出来れば早い段階でチェックをし、必要があれば交換する事をおすすめします。
※レース仕様の車両は500kmくらいで交換していましたよ~!



更にピストンを外すと、クランクケース内にあるクランクシャフトが見えてきます。
最終的な状態はケースを割ってから確認しますが、この段階からすでにクランクもかなり焼けているのがおわかりですね。この状態でコンロッドの動きにゴロつきや上下にガタが有る時はNGですね。



これはクランクシャフトのリークテストです。
エンジンを降ろす前にまず上側のシリンダーからガソリンを流し込み、センターシールの抜けを確認します。センターシールが抜けていると上側から流し込んだガソリンが下側のバンクから流れ出してきます。



ご覧の通り、ガソリンが流れ出し、こちらのクランクのセンターシールは完全に抜けてしまっておりアウトでした。
センターシールが抜けていると、各シリンダーで密閉が保てなくなり、片方が極端に薄くなってしまったりしてエンジンがかからなくなったり、そのまま走行していると、焼き付き等のエンジン損傷の原因にもなります。



これは外したシリンダーヘッドです。デトネーションの有無や、プラグホールまで全て確認していきます。
もし使用不可能の状態であれば、デトネーションリングの追加工や修正を行います。もちろん修正が不可能なくらい損傷があれば新品交換致します。
NSR250Rは下側シリンダーヘッドの方がプラグセンターが中心よりずれている為、デトネーションが発生しやすいのでよく点検していきます。

ドッグファイトレーシングではシリンダーヘッド及びシリンダーの加工も承っております。
詳しくはこちら




シリンダー内部もチェックしていきます。ピストンとの擦れによる傷のチェックやポート部の確認をしていきます。
傷がひどい場合や内径が大きくなった物は再メッキ加工を施します。
NSR250Rの場合、排気ポートのセンターリブの部分が特に痛みやすいので要チェックしていきます。



オイルポンプも外して作動状態を確認します。NSRのオイルポンプはオイルシールが脱落しやすいので気を付けて行います。
ポンプを外さなくても2ストオイルの減りが早いT/Mギアオイルが増える等の症状が出ている場合はオイルシール抜けが疑われます。



チェンジアーム、ドライブスプロケットを外し、4ケ所のE/Gマウントとリンクアームを外し、キャブレター、シリンダー、ピストンを外した状態でエンジンを降ろします。まだクラッチは外していません。


E/Gを降ろす前にオイルを抜きますが綺麗なオイル受けに抜いたオイルを受けて中に異物(金属片等)が無いかチェックします。





クラッチ側のケースカバーをノックピンを忘れないように外し、クラッチを外していきます。
乾式クラッチの場合、クラッチを先に外してからケースカバーを外す手順になります。



クラッチも1枚1枚点検していきます。焼けや厚み等をチェックしながら、使用不可能なものは交換していきます。走行距離が長い車両はクラッチが滑り出す前に交換してしまいます。




クラッチのアウターやハウジングも点検します。この車両は段付きが出始めており、限界に近い状態でした。ガタつく前にここの交換も致します。ここに段が付いてしまうとスムーズにクラッチが切れなくなったりしまうので、写真のようになる前に交換が望ましいです。


乾式クラッチは湿式タイプよりここの摩耗が早いのでこまめにチェック致します。





オイルポンプを外してからミッションを外していきます。カセットミッションなのでこのままごっそり抜けます。
オイルポンプのボルトはネジロックされているので無理に緩めようとすると切れてしまうので要注意です。



外したミッションです。中々ケースから抜けないと思ったらベアリングが固着していました。そのままでは抜けないのでベアリングごと抜き出しました。




ミッションを外したらシフトフォークも点検していきます。ギア抜け等のミッショントラブルを防ぐためにも入念にチェックしていきます。
94以降の車両の場合シフトリターンSPGを強化タイプの物に交換してしまいましょう。




ミッションギアは欠けや割れ等がないか。摩耗しすぎていないか等をチェックしていきます。
角が丸くなっている物はギア抜けの原因となります。




クランクケースを分解していきます。ケースを割ると中からクランクシャフトが出てきます。





クランクケースを確認すると、ベアリング本体が回転してしまい、
位置決めの突起部分がケースに当たってしまっています。
よほど酷い状態になってしまうと最悪の場合ケース交換となります。

キレイに掃除した後、ひずみを点検。ストレートエッジでクリアランスを測定します。また、ケースの無駄なバリ等を取り除きます。












センターシールが抜けてしまったクランクは90年式以降はASSY交換致します。
88・89はすでにメーカーで廃盤となってしまっておりますのでクランクのオーバーホールを実施致します。



シール類やベアリングは全て交換します。






クランクケース内のベアリングも全て交換します。











クランクシャフトの振れをチェックします。振れがあるようであれば、高精度芯出し加工を施します。
新品のクランクであったとしてもドッグファイトレーシングでは全てチェックし、より精度を高めるために修正していきます。








リードバルブの点検をしていきます。しっかりと羽が閉じているかどうか、ベース面との当たり等、作動状態を確認し、洗浄致します。
問題があればもちろん交換していきます。









続いてキャブレターです。
長期間乗っていない車両や、走行距離の長い車両は要チェック箇所です。
この車両も全てバラしてチェックしていきます。



ガソリンや空気の流れる、穴という穴を全てチェックしていきます。
年式の古い車両や長期間乗らなかった車両は詰まってるところがあるので大事な作業となります。
フロートバルブ等も段付き等ダメになっている場合があるので、新品に交換致します。



全ての穴とジェット類を確認し、付着した細かいガソリンやオイルの汚れを取るために洗浄液に漬けてキャブレターとしての機能を取り戻します。

一度詰まってしまったジェット類や摩耗の激しいジェットニードルは全て新品に交換します。キャブレターは1000分台の精密部品ですから。



インシュレーターもチェックします。経年劣化によりクラック等がある場合があり、その場合二次エアを吸ってしまう可能性があります(焼き付き等の原因になります)。
クラック等がある場合は新品に交換してしまいます。





完成



 

 

 



このように車体・エンジンの全てをチェックし分解・清掃・点検・交換を行い、トルク管理をしっかりと行った上で組み上げて完成となります。

また、今回ご紹介させて頂きました2st車両のエンジンや車体のO/Hは単体でもお受けしております。
もちろん上記のように全て分解・清掃・点検・交換を行うメニューは同じであります。
お問い合わせ、ご用命はご連絡頂ければと思います。


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